箕作家(みつくりけ)は、親族に学者が多いことで知られる日本の家系のひとつ。
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学者一族としての箕作家は近世の蘭学者箕作阮甫から始まる。阮甫の子孫や婿の系列にも著名な学者も多い。
なお、現在の箕作家当主は学者ではなく、箕作本家の学者一家の伝統は途切れている。
箕作家は宇多源氏佐々木氏の支流を称し、室町時代に六角承禎の父定頼が、近江国箕作城(現在の滋賀県東近江市五個荘山本町)に住んで箕作を称したのに始まるという。その後箕作家は美作国に移り現在の岡山県美作市楢原に住み、箕作貞辨の代に医家となった。
箕作家の著名人
近世箕作家の祖、箕作阮甫は男子に恵まれなかった。そこで阮甫は優れた弟子を婿養子に迎え、また他の女子を弟子の優れたものに嫁がせた。それらの弟子が学者になることが多かったため、結果的に箕作家は女系を通じて、学術分野の多くの人材とつながる現象が生じた。
ニュートンの編集長で地球科学者の水谷仁は同誌の連載「学問の歩きオロジー」において「子供を教育するのは、その親の本分であることをみんな忘れてしまっている」という箕作秋坪(阮甫の弟子で婿養子)の言葉を引用した上で「箕作家では少なくとも親、祖父が子供を熱心に教育していたのが知られていますから、この秋坪の言葉には重みがあります」と語っている。箕作家は家庭での教育の重要性も知っており、そのことが多くの学者を輩出した事由の一つであると考えられる。
たとえば、土星型原子モデルを提唱した理論物理学者長岡半太郎は娘婿であり、電子線回折実験で世界的に有名な実験物理学者菊池正士は女系子孫、天皇機関説を主張した法学者美濃部達吉は女系子孫の娘婿である。
箕作男爵家
箕作阮甫は、妻といとの間に4女をもうけたものの男子が無かった。
長女・せきは弟子の山田黄石に嫁がせ、黄石は後に呉と改姓、呉家の祖となった。
三女・つねと四女・しん(ちま)には弟子を婿養子として迎えた。(次女は夭折)
2人の婿養子のうち、しんの夫・箕作省吾が夭折したので省吾の長男・箕作麟祥が秋坪とともに嗣子となった。1854年(安政元年)に阮甫は秋坪に家督を譲って隠居し、麟祥を連れて分家した。これが箕作男爵家の始まりである。
阮甫の死後・麟祥が箕作男爵家の当主となった。麟祥の長男・泰一と次男・正次郎はともに夭折したため麟祥(死に際して男爵を贈られた)の死後三男・祥三が家督と爵位を継いだ。だが祥三も夭折したため異母弟の俊夫(麟祥の四男)が男爵箕作家の3代目(阮甫から数え4代目)当主となった。
なお麟祥の長女・貞子は石川千代松に、三女・操子は長岡半太郎に嫁いだ。
俊夫の死後家督と爵位は、長男・祥一が継ぎ敗戦に至った。祥一(元日本大学農獣医学部教授)の死後は、その弟・俊次(俊夫の次男)が箕作本家の当主となり、2005年現在の当主は俊次の長男・有俊である。なお、俊次・有俊の親子は共に学問以外の道を歩んだため、ここに至って箕作家の学者家系としての伝統は絶たれたといえる。
箕作秋坪家
箕作阮甫三女・つねの婿養子・箕作秋坪から連なる家系。秋坪には、長男奎吾、次男大麓、三男佳吉、四男元八がいた。
このうち、長男の奎吾は明治維新後に家督を引き継ぐが夭折したため、四男元八が秋坪家の3代目当主となった。次男・大麓は、菊池家(父秋坪の実家)に養子入りした。三男・佳吉は、分家した(別項参照)。長女・直子は坪井正五郎に嫁ぎ2男2女を産んだ。
3代目箕作元八には秋吉・洋輔の2人の男子がおり、長男の箕作秋吉が4代目当主となった。元八の次男・洋輔は、分家した。
箕作佳吉家
箕作秋坪の三男・佳吉から始まる家系。箕作佳吉は6人の男子があったが次男と六男を除いて夭折したので、佳吉の死後、次男・良次が2代目当主となった。六男・新六は分家した。なお佳吉の長女も夭折、次女・花子は吉阪俊蔵に嫁いだ。
箕作家と姻戚関係にある家系
箕作家は娘を優秀な学者に嫁がせる傾向にある。また実業界や軍人の家系にも姻戚関係がある(詳しくは各人物の項目を参照のこと)。
呉家
呉家は山田黄石が改姓して始まった家系であり、黄石には箕作阮甫の長女・せきが嫁いでいる。
黄石の長男・建は医学博士号をもつ心臓病学者。次男・文聰は統計学者。 三男・秀三は日本の精神医学の草分けとして知られる。また、文聰の次男・文炳は経済学者で日本大学第4代総長。秀三の長男・茂一は、西洋古典文学の研究者である。
長岡家
長岡家の長岡半太郎(物理学者)には、箕作麟祥の三女・操子が嫁いでいる。
半太郎は土星型原子モデルを提唱したことで有名である。半太郎の長男・治男は元理化学研究所理事長、四男・順吉は元東京水産大学教授、嵯峨根家の養子となった五男・遼吉は実験物理学者である。また、半太郎の次男・正男は日本光学工業の社長である。
大島家
麟祥の四男・俊夫の妻・長江の実家が、大島家である。
長江は陸軍中将・大島健一の長女。なお長江の兄は、A級戦犯の大島浩(駐ドイツ大使、日独伊三国同盟の立役者)である。
菊池家
(関係)菊池家の次男秋坪が箕作阮甫の婿養子となり箕作秋坪となる。しかし菊池家に嗣子が無かったため、逆に秋坪の次男大麓が菊池家の養嗣子となった。すなわち菊池大麓の母は箕作阮甫の娘である。
菊池大麓は日本での近代西洋数学史上の最初期の数学者で、科学行政家としても活躍した。大麓の四男は物理学者・菊池正士である。
大麓の娘婿として、天皇機関説で有名な美濃部達吉(憲法学者)と鳩山和夫の次男・秀夫(鳩山一郎の弟で民法学者)、労働法の権威・末弘厳太郎がいる。経済学者で東京都知事を務めた美濃部亮吉は達吉の長男。
吉阪家
吉阪家の吉阪俊蔵(大正昭和期の官僚)には、箕作佳吉の次女・花子が嫁いでいる。
俊蔵の長男・吉阪隆正は建築家である。
坪井家
坪井家の坪井正五郎(自然人類学者)には、秋坪の長女・直子が嫁いでいる。
正五郎の長男・誠太郎は地質学者、次男・忠二は寺田寅彦門下の地球物理学者である。
石川家
石川家の石川千代松(動物学者)には、麟祥の長女・貞子が嫁いでいる。
千代松の姉の孫・南博は社会心理学者である。
系譜
古田 良三
┃
大槻 魯庵 ┏━━━夏
┃ ┃小松恒太朗
呉 黄石 ┏━━━ヤス ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━━敏
┣━━━━━━╋呉 文聰 ┣呉 建━━呉 守一
┃ ┃ ┣━━╋呉 文炳━━呉 直彦
┏━━さき ┃ やす ┃鷲見 寛司
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃相原 浩明 ┗━━━たつ
┃ ┃ ┃ ┏日高 得二
┃ ┣━━━クミ ┃北島 常晴
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃日高 秩父 ┣━━━愛子
┃ ┃ ┣━━┫大島 予吉
┃ ┣━━━リキ ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━喜美子
┃ ┃ ┃大東 健夫
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━━勲子
┃ ┃ ┣田中 光三
┃ ┃ ┣日高第四郎
┃ ┃ ┗日高第五郎
┃ ┃ ┏━━━タマ
┃ ┃ ┃木村 男也
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━━カツ
┃ ┃ ┣呉 茂一
┃ ┃ ┃斉藤 助尭
┃ ┃ みな ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━╋━━いくよ
┃ ┗呉 秀三 ┗━━━芳江
┃ ┣━━━呉 章二
┃ みつ 美濃部達吉
┃ ┣━━━美濃部亮吉
┃ ┏━━多美子
┃ ┃鳩山 秀夫
┃ ┃ ┣━━━鳩山 道夫
┃ ┣━━千代子
┃ ┣菊池 泰二 ┏菊池 士郎
┃ ┃末弘厳太郎 ┃藤岡 知夫
┃ ┃ ┃ ┃ ┣━━━藤岡 幸夫
┃ ┣━━━冬子 ┣━━━純子
┃ ┃平山復二郎 ┃野田玲二郎
┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┣━━━英子 ┣━━━克子
┃ ┣菊池 健三 ┃島野 恵
┃ ┣菊池 正士 ┃ ┃
┃ ┏箕作 奎吾 ┃ ┣━━╋━━━雅子
┃ ┃ ┃ 妙子 ┃高田 英雅
┃ ┣菊池 大麓 ┃川村 秀文 ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━┫ ┃ ┗━━━和子
┃ ┃ たつ ┗━━百合子
┃ ┣箕作 佳吉
箕作阮甫 ┃ ┃ ┣━━┳箕作 良次
┃ ┃ ┃ 安 ┣箕作 新六
┣━━╋━━つね ┃ ┃吉阪 俊蔵 ┏吉阪 昭治
┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣━━╋━━よし子
登井 ┃ ┃ ┃ ┗━━━花子 ┗吉阪 隆正
┃ ┃ ┃ 甲野 謙三 ┣━━┳吉阪 正邦
┃ ┃ ┃ ┣━━━━━富久子 ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┏━━━綾子 ┃ 輝子
┃ ┃ ┃ ┣箕作 秋吉 ┣吉阪 正光
┃ ┣━━━━━━┫ ┃矢野 矢 ┗フェリサ岳子
┃ ┃ ┗箕作 元八 ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━╋━━━縫子
┃ ┃ みつ ┣箕作 洋輔
┃ ┃ ┃堀田 嘉幸
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┗━━━歌子
┃箕作秋坪 ┏坪井誠太郎
┃ ┃ ┃ ┣━━┳坪井 正道
┃ ┃ ┃ 百合 ┃小寺 嘉秀
┃ ┃ ┃西田 正三 ┃ ┃
┃ ┃ 坪井正五郎 ┃ ┃ ┣━━━信子
┃ ┃ ┣━━╋━━━春 ┗坪井 直道
┃ ┣━━━━━━━━━━直子 ┃佐谷 台二
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━━菊 幾島 明
┃ ┃ ┗坪井 忠二 ┃
┃ ┃ ┣━━━━━━良子
┃ ┃ 正子
┗━━しん
┃ もと 石川千代松
┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┏━━━貞子
┃ ┣━━╋━━━茂子 ┏長岡 治男
┃ ┃ ┣箕作 泰一 ┣長岡 正男
┃ ┃ ┣━━━操子 ┃岡谷 辰治
┣━━━━━━━箕作 麟祥 ┃ ┣━━┫ ┃
┃ ┃ ┃長岡半太郎 ┗━━━フミ
┃ ┃ ┃ ┣━━┳長岡 順吉
┃ ┃ ┃ 登代 ┣嵯峨根遼吉
┃ ┃ ┣箕作正次郎 ┣長岡 鉄吉
┃ ┃ ┗箕作 祥三 ┣長岡 冠吉
┃ ┃ ┗長岡 振吉
箕作省吾 ┃
┣━━━箕作 俊夫 近江 治彦
┃ ┣━━┳箕作 祥一 ┃
┃ 長江 ┃ ┣━━━━━━━禎子
┃ ┃ 千代子
┃ ┗箕作 俊次
┃ ┣━━┳箕作 有俊
┃ 康子 ┃ ┃
┃ ┃ 裕子
とを ┗━━━━温子